ずっと狭い頭の中だけで生きている感じ
こんにちは。お元気ですか。私は変わらず生きています。
最近は暑くて家から出られない日々が続いてる。散歩に行きたいのだけど、朝でも夕方でも暑い。ずっと家の中にいると、なんというか精神が脳みそのなかに閉じ込められているような気分になる。最近はその傾向が強い。私は目や耳で情報受けとっているはずだけど、それは脳みそまで到達せずに、私はずっと狭い頭の中だけで生きている感じがする。
サイバーパンク2077をやってる。二週目。とても素晴らしいゲーム。ここ数年出たゲームの中じゃ頭一つ抜けてるんじゃないだろうか? 全部をやったわけじゃないけど、少なくとも私がやったオープンワールドゲームの中ではとてもよくできてる。
一足早いのかわからないけど、私は昨日から夏休み。また何もせずにすぐに終わってしまうんだろうなと思う。珍しくちょこちょこと予定がある。でも傍から見たら何もないのと同然なので、この休み中にちょこちょこ仕事を押し付けられる。私以外みんな妻子持ちで色々と予定があるのだ。
意味がわからないよなあとイライラしながらも、まあ普段その分私は何もしていないので、恩を売るじゃないけど、やってますよアピールできると考えれば良いかとなる。しかし去年もこんな感じだったので、今年の冬休みはがっつり予定を入れてやろうかなんて考えてみる。雪が見たい。ただ年末年始の旅行は考えただけでもちょっと憂鬱(お金……)。
この休み中にひとつ小説を書ければ、それで良いということにする。小説を書くのは楽しい。ただ結局どこまで行っても孤独だなという感覚が消えない。
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今日書いた小説を公開!
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ふと思い出したように加奈は自分には双子の姉がいるのだということを婚約者の勇樹に打ち明けた。自分でも忘れていたのだけど、といった調子で。彼は案外すんなりとそのことを受け入れた。珍しくはあるけど、これまで出会ったことがないというほどでもない。それに加奈はほとんど自らの家族の話をしてこなかった。だから彼としては加奈の家族構成に対して特に偏ったイメージなどは何も持っていなかった。
「一卵性? 二卵性?」
「一卵性」
「じゃあ、君とそっくりなわけだ」
「うん、そう。たぶん見分けられないと思う」
彼は若干不服そうにうなずいた。それから「写真とかないの?」と言った。加奈は少し考えて──考えるまでもないのだが──首を横に振った。
「私たち写真には写らないようにしてるの」
「どうして?」
「だって何だか不気味でしょう? 同じ顔が二つ並ぶのって」
「うーん、そういうものなのかな」
それから加奈は子供のころ、瑠々と一緒に二人で写真には写らないことにしようと約束しあったことを思い出した。
「写真を撮られると魂が抜かれるって迷信があるでしょう? それを子供のころに映画かテレビ番組とかで見て、すごく怖かったのを覚えてる。家中の写真を破いてまわりたいくらいだった。もう二度と写真には写りたくないと思ったのだけど、それを母に言うのも何だか子供っぽくて恥ずかしくて──双子の姉が年のわりにはませてたから私も子供っぽいところは見せないようにしないとって思ってたのね──それでそのことを姉の瑠々ちゃんに話したの」
加奈はテーブルの上で指を組み、人差し指についているアクセサリーをいじった。罪のない土曜日の夜だった。
「そしたら瑠々ちゃんはこれまで何度も写真に撮られてきたでしょって当たり前のことを言うの。子供のわりには結構現実的なものの考え方をするのよ。でもそれはそうなんだけど、怖いものって怖いのよ。これまでは大丈夫だったかもしれないけど、そのことが次も大丈夫であることの証拠にはならないでしょう? 私がそんなことを言ったら、瑠々ちゃんは考え込んで、でも二人で写真を撮るのはちょっと嫌かもって言ったの。よくわからないけど、二人が一人になっちゃうような気がするからって。神様が同じ顔の人間は二人もいらないから、くっつけてしまおうって考えるかもって言うの」
彼は加奈の話を聞いて、「子供の考えることは理解できないな」と笑った。でもあなたも昔は子供だったのよ、と加奈は思ったが口には出さなかった。
「それに加奈だけが写ってる写真を見るのも嫌だって。自分は実際には体験していない記憶が何だか頭の中に入ってくるようで気持ち悪いからって。やっぱり双子だからかその感覚は私にもすごく理解できたの。だから私たちはどうしようもないときを除いて、写真には写らないって二人で約束したの。だから私は瑠々ちゃんの写真は持ってないの」
「一枚も? 卒業アルバムくらいはあるでしょ?」
「卒業アルバムは実家。それに二人そろって一枚の写真に写ってるのは小学校のクラス写真くらいよ。中学校はクラスがずっと別だったし、高校、大学は別々にしたから」
「それは残念。でも会ってみたいな。僕らの結婚式にはもちろん呼ぶんでしょ?」
加奈はその言葉でなぜ急に瑠々の話をしたのかを思い出した。
「それが今どこで何をしているのかわからないのよね」
「行方不明ってこと?」と彼はちょっと心配そうに言う。私は首を横に振って、「そんなに大げさなものじゃない」と言った。
「ただ、連絡を取り合ってないだけ」
「双子なのに仲が悪いの?」
「別にそんなんじゃないけど、なんて言うか、ただ連絡を取り合ってないだけ」
「さっきと言ってること同じだよ。何年くらい連絡を取ってないの?」
彼に言われ、加奈は指を折って年数を数える。高校を卒業して、瑠々が家を出てからだ。
「八年」
「ずいぶん長いような気がするけど、僕は一人っ子だからそこら辺の姉妹事情はわからないや」
「結婚式には呼ぼうと思うの」
「うん、もちろん」
その夜、加奈は瑠々に連絡をしてみようと、連絡先を探したが瑠々の名前は消えていた。いつからだろう。おそらく瑠々が家を出てすぐだと思った。家族との縁を切ったのだ。彼女はずっと一人で生きたがっていた。加奈と離れたがっていた。加奈は念のため、登録してあった瑠々の電話番号に電話をかけたが案の定繋がらなかった。母たちもおそらく同じ状況だろう。昔は瑠々のことを心配していたが、今では半ばあきらめている。
こんなにも簡単に家族の縁は切れてしまうものなのだろうか。たかがアプリを一つ初期化して、電話番号を変えるだけで?
加奈はスマートフォンをベッドサイドに置いて目を閉じた。瑠々に会いに行こう。そう決意し、彼女は眠りについた。