【短編小説】クリスマスホーリー
愛じゃなかったのだろう。分からない。形が変わり果てただけなのかもしれない。腐っても鯛という言葉があるように、それも愛なら、私は愛として受け取らなければいけなかった。
12月の初めに彼と別れた。彼はそれが誠実さであると信じているかのように私に告白した。あの時と同じようにじっと私の唇ばかりを見ていた。状況が上手く飲み込めなかった。赤く塗った唇だけがひとりでに笑い、言葉を発した。それは私の言葉ではなかったが、彼は安心したように私の目もとまで視線を上げた。
「じゃあね。いつかまた」
私はうなずいた。
愛しているという言葉を彼はこの半年の間に計12回ほど私に言った。ちなみに私が愛していると彼に伝えた回数は計7回だった。
愛とは不変のものではなかったのか。彼が愛していると言い、私が愛していると返せばその瞬間に愛は完成され幸せとして永遠に私たちの間に存在し続けるものでないのか。それとも彼の愛している嘘だったのか。私には分からない。
クリスマスは一緒に過ごそうと言っていた。私の勘違いだったのかもしれない。わけも分からずなぜかケーキだけ二人分用意した。一人分を買うことが恥ずかしかったのかもしれない。残して捨てるのももったいない気がして無理してふたつ食べた。少しだけ救われた気がした。
周りの幸せにあてられて、幸せについて考える。私の幸せとは何なのだろう。赤い実のついたヒイラギが乗ったケーキを愛している人と一緒に食べることなのだろうか。分からない。ただ今この瞬間が幸せじゃないことだけは確かだ。
ぽた、ぽた、と私から何かが床に落ちた。それは目から出た透明な血だった。もう何も見たくないのだと泣いていた。もしも神さまがいるのなら教えてほしい。いつかまた、私に幸せが訪れるのかどうかを。