いつだったか、誰かに春は天気が移ろいやすい季節だと教えてもらった。天気なんて今が晴れか雨かくらいでしか認識していなかったので、ほへーと思った。でも天気が移ろうという感覚はよくわからなかった。

今日の夕方は、空がどんより曇っていて、湿気を含んだ風が吹いていた。いかにも雨が降りそうという天気なのに、どこかこのまま晴れるんじゃないかという予感がする、そんな天気だった。たしかに冬にはなかった天気だ、と思った。冬にこんな柔らかくて大きな風は吹かないし、湿気を多く含んだまとわりつくような雨も降らない。冬は晴れといえば晴れ!雨といえば雨!という感じがする。冬の雨の日はどうぶつの森の雨を思いだす。

春は天気が移ろいやすい季節だと私に言ったのはたぶんあの人だと思う。SNSでしか話したことはないけど、一度だけ一緒に小説を書いた。たぶんあっていると思うのだけど、どうしてそんな話になったのか覚えていない。私は誰かとSNSで天気の話ができるほどコミュニケーションに長けていないので、何かこうパッと思いついて口にしたのだろうと思う。

季節が変わるたび「初めまして、なのに私はあなたのことをなぜか知っている気がします」みたいな感情になる。だから毎年まあまあ新鮮な気持ちで新しい季節を迎えている。前世の記憶とか、遺伝子に埋め込まれた反応みたいな、そんな感覚で季節を感じる。

春なんてもう20回は経験してるはずなのに、毎年どこか新鮮で、どこか懐かしいのはなぜだろう。

冬と同じ格好で出勤して仕事をして、なんか暑いなと思ったので春なのだ。私はワイシャツの上にカーディガンを着て仕事をしてる。結局最後までスーツのジャケットは着なかった。ずっと寒かった。

ジャケットってなんかこう、ごわっとしているというか、着させられてる感があるというか、大人っぽくて嫌なのだ。社会人という感じがするし、大人な男の人という感じもする。

今日は暑かったので、ワイシャツ姿で仕事をしている男性の方が多かった。その姿を見るたび、なんだかいつもより男らしいなと思った。体の線がはっきり出るようになって、肉体そのものの大きさが際立つからだと思う。その生々しさというか、グロテスクな主張の強さがなんだか気持ち悪く感じた。

ああ、これからの服装どうしようかなと思い悩む。カーディガンは気に入っているけど夏場なんかはさすがに暑い。となるとワイシャツで出勤しなければいけない。なんだかいかにも男性的な気がして憂鬱になる。まあ去年はため息つきながら着ていた気がするし、そのうちなんとも思わなくなるだろう。

女性的な格好がしたいわけじゃない。ただ男性性を消したいだけ。そして中性的でありたいと思ってるわけでもない。

夏は嫌いだ。暑すぎるから。