電車で席を譲った話
今日、駅の自動販売機で飲み物を買っていたら、女子高生二人組のうちの一人がゴミ箱の横に落ちてたポテトチップスの袋を拾って捨てたのを見かけた。
私の目にもそのゴミは見えていて、でも行く方向とは別だったからなんとも思っていなかった。たぶん拾おうという考えすら起きなかったと思う。
そのゴミを彼女はとても当たり前のように拾って捨てた。たぶんもう一人の子と何か別のことを話しながらだったと思う。
その年下の女の子を見て、私はなんてダメな人間なんだろうと思った。もし私の目の前にゴミが落ちていて拾えたかと言われたら微妙なところだと思う。
拾うという考えは浮かぶのだけど、目立ちたくなくて素通りしてしまうかもしれない。
今ふと思い出したのだけど、小学生のころ同じようなことがあった。教室で黒板消しか何かが落ちていて、私が見て見ぬふりをして通り過ぎたらクラスメイトに「絶対見えてたでしょ」的なことを言われた。
その後どうしたのかは覚えていないけど、未だにそんなことを覚えているあたり、根っこの部分は当時から何も変わっていないだなって思う。
そういえばこの前、女性が落としたハンカチか何かを走って届けていた男性を見かけた。男性は何だかぎこちなく気まずそうに声をかけていた。
いい人っているんだなぁって思う。それを当たり前だと思っているのか、勇気を奮い立たせているのか分からないけど、どちらにせよ本当にすごいと思うし、尊敬する。
私はそういうことが嫌で仕方がない。
話を戻すと、私はその女子高生を見ていいことを、自分が正しいと思うことをしようと思った。そういうふうに生きていきたいと私は常々思う。
そんなことを考えながら電車に乗っていると、目の前に妊婦さんが乗ってきた。初めのうちは気づかなかったのだけど、あの妊婦さんバッチ(マタニティマークという名前みたい)が目に入った。
空いている席はなかったので、私が譲るしかないと思った。バッチなんて付けなくても分かるくらいお腹も大きかった。
電車が止まったら譲ることにした。色々言い訳を並べると、次の駅で降りるかもしれないし、車内はそれなりに混んでいた。
そして電車が止まって彼女が降りないことを確認してから私は席を立った。「席どうぞ、座ってください。ごめんなさい」みたいな感じでなぜか謝ってしまった。
彼女はえ?私ですか?みたいな顔をして、頭を下げて席についた。電車で誰かに席を譲ったのは初めてだった。
このまま逃げだしてしまいたいような気分だったけど、車両はそれなりに混んでいたし、次の駅で降りるつもりだったからそのままつり革につかまって目を閉じた。
正直、正しいことをしたという実感より、後悔の方が大きかった。不自然ではなかっただろうか、彼女は本当に妊婦だっただろうか、そもそも妊婦さんに席を譲るのは自分の勘違いじゃないだろうかみたいなことを延々と考えていた。
たぶん私が彼女の立場だったら他人に席を譲られたいと思わない。もちろん私に妊婦の経験はないのであくまで想像にすぎないけど。
相手に対して申し訳なく感じるし、やっぱり目立ちたくないのだ。だから最初、私は彼女に対して申し訳なさのようなものを感じた。
私の「席を譲らない若者」というふうに見られたくないという、くだらない動機のために譲られる人という立場を強制的に押しつけてしまった。
でも結局考えると私には席を譲るという選択肢しかないのだと思う。相手がどう思っているかなんて分からないし、私に立てない理由はないのだから。
たぶん良かれと思ってやったことが裏目に出てしまったことが何度かあって、それがトラウマになっているんだと思う。
初めの話に戻るけど、いい人とか正しさみたいなものはいったいどこに行ってしまったのだろう。ここにいるのはただただ弱い私だけだ。
私が思う強い人というのは、自分の中にある絶対的な価値観に従って行動できる人だ。私はそんな人になりたいと思う。
利他の精神みたいなものは、私にはあまりなくて、自分を犠牲にしてまで他人を助けたいなんて思わないけど、私が助けられる人は助けるべきだと思っている。
結局は人の目から解放されたいっていうことなんだと思う。こういうことってなかなか人に話せないから、もやもや自分の中に溜まっていって、トラウマのようなものになってしまうからここに書けてよかった。