いつか私がいなくなったとき、誰が私を覚えていてくれるのだろう。

完全に忘れ去られてしまったら、それは死ぬより寂しいことのように思える。

だからといって、いままで出会った全ての人に覚えていてほしいとは思わない。

そんな頻繁に思い出してほしいとも思わない。

ただ、ほんの数人が、私がいなくなってから、数年後にふと思い出してほしい。

そして押し入れから出てきた文房具のように懐かしんでほしい。

それだけで生きた意味がある気がする。

死んでしまいたいというより、消えてしまいたいと思うのはこういったところから来ているのだろう。

死んでしまったら私の生きた記憶はすべて死に塗り変えられてしまう。

死別したペットの首輪を見つけたときのような思い出し方はしてほしくない。

記憶ごと消え去れるとしたら?

よく映画なんかである存在ごと消えてしまうやつ。

ふたりで取った写真で、私だけが消えてしまうような演出。

写真は嫌い。

たぶんそんなに頻繁に思い出して欲しくないからだと思う。

写真は記憶を強制的に切り取り保存するもの。

消してしまいたい記憶は多くある。

でも……

消えてほしくない記憶もある。

不思議と消えてほしくない記憶の方が多い気がする。

どうしてだろう。

私は幸せものなのかもしれない。

私の幸せな記憶を覚えていてほしい。

そしていつか小さく思いだしてほしい。